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大阪高等裁判所 昭和54年(ネ)384号 判決 1979年8月09日

控訴人 森武一

被控訴人 国

訴訟代理人 大江保

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事  実 <省略>

理由

一  当裁判所も原判決と同様控訴人の本訴請求を棄却すべきものと判断する。その理由は次のとおり訂正、附加するほか原判決理由説示のとおりであるからこれをここに引用する。

原判決三枚目表七行目の「判断」を「担当裁判官の判断」と訂正する。

二  控訴人は、同人が請求原因として主張する控訴審判決に対し、本件金五万円の納付を命ずる部分についてもその不当を理由として上告したが、最高裁判所で右納付を命ずる部分を含めて上告棄却の判決を受け、右判決が確定したことは控訴人において自認するところである。

確定判決の主文に記載された民訴法三八四条ノ二に基づく金銭の納付を命ずる部分が、担当裁判官の事実誤認による違法行為であると主張して国家賠償を求めるためには、裁判確定の制度の趣旨に照らし、右金銭納付部分に対していわゆる準再審を提起するか、又はこれと本案の裁判を一括して再審の訴を提起したうえ確定裁判の取消を受けることが必要であると解される。

したがつて、控訴人が本訴国家賠償の請求をなしうるためには右再審の訴による確定裁判の取消が必要とされるところ、控訴人はこれを何ら主張、立証しないし、本件全証拠によるもこれを認めるに足りない。

三  よつて、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 下出義明 村上博巳 吉川義春)

【参考】第一審判決

(神戸地裁伊丹支昭和五三年(ワ)第八三号昭和五四年二月一五日判決)

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判<省略>

第二当事者の主張

一 請求の原因

1 原告を控訴人、訴外中前寿郎、同梶谷栄一を被控訴人とする大阪高等裁判所昭和五二年(ネ)第一一一三号損害賠償請求控訴事件において、昭和五二年一〇月一四日同裁判所裁判官は控訴を棄却するとともに、控訴人たる原告に対し民事訴訟法第三八四条の二を適用して金五万円を国庫に納付することを命じた。

2 この裁判に対し原告は上告をしたが昭和五三年四月一四日、右金銭納付部分が変更されることなく上告棄却の判決を受けて確定したため同月二六日原告は国庫に対し金五万円の納付をなさしめられた。

3 しかし、右控訴審の裁判官が原告に対し金五万円の納付を命じるに至つたのは、故意又は過失により、右控訴事件の被控訴人たる訴外中前寿郎の虚偽の供述にまどわされ、事実を誤認し、控訴人たる原告の主張を採らなかつたことによるものである。

4 原告は右控訴審の判決により精神的、物質的に損害を受けたがその額は五〇〇万円をもつて相当とする。

5 よつて、原告は被告に対し、右損害賠償金五〇〇万円及びこれに対する本件訴状が被告に送達された日の翌日である昭和五三年五月七日から完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二 請求原因に対する答弁<省略>

第三証拠<省略>

理由

請求原因1、2の事実は当事者間に争いがない。

原告は、確定判決(原告が当事者として訴訟活動をしたことは弁論の全趣旨によつて明らかである。)でなされた判断が違法であるとして本件において国家賠償を請求するものであるが、再審制度の趣旨から考えて、このような確定判決を担当した裁判官の判決行為自体を違法であるとするにはその確定判決が再審により取消されることを要すると解すべきところ(原告主張の裁判が金銭納付部分であることも右解釈を左右しない。)、この点につき何らの主張、立証のない原告の本訴請求は理由がないものというべきである。

よつて、原告の本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 井筒宏成)

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